「富士見町といえば、キャンプブックだよね」 毎年恒例の行事として認知されるために

イベント業界では異例の、主催と制作を両方賄う複雑な立場を続ける樋口さんが、コロナ禍により、2年間の空白の期間を乗り越え、今年無事に開催された念願の『THE CAMP BOOK』。
その当日までの軌跡と共に、音楽フェスのやりがいや、樋口さんが当日感じたことや、これまでの想い、そしてこれからの展望などについても引き続きお伺いしていく。

挫折を重ねて、経験を積んで

「何もかも手探りで始めた1度目の開催の2017年、そしてその経験を活かして続けた2018年。
実は1回目と2回目の会場は今の富士見高原リゾートとは別の場所なんです。
1度目は本当に右も左も分からないような状態でスタートして、いざ終わって次の年の事を考えたら、会場のキャパが理想の動員人数からしたら小さいということに気づいて。
本来こういうイベントは毎年同じ場所の方が良かったんですが、そういうことも初めてのイベントだから分からなかったんですね」

そこで2回目の会場は別の場所を選択したのだという。
しかしここも終わってみると理想の場所とは言い難い事実が判明したと樋口さんは語る。

「会場までの動線が不便で、目的地にたどり着くまでにお客さんやアーティストの方々の負担を増やしてしまう結果になりました。
さらに会場の中にも障害物があったりして、イベント中の移動でもお客さんを疲弊させてしまい……。
段々と経験を積んでいく中で、実際に失敗しないと学べないこともあったと、今では良い勉強になったと思ってはいます。
ただ、実際に不満の声などを聞いた時は、自分の見通しの甘さや経験不足を痛感して落ち込みましたね」

そんな経験をしても、諦めず次の開催へと目を向けて動き出していった樋口さんが3回目、次の会場に選んだのが、現在も同じ場所での開催を続けている富士見高原リゾートだった。

安住の地に決めた場所

「電車や車での現地までのアクセスの良さ、そして会場自体の展望の良さと自然に触れられる環境も揃っています。
何より担当者の熱意が素晴らしくて、そこに惚れ込んでいるんです。
情熱を持って、好きなものやりたいことに打ち込む、リペアのチャレンジ精神の要でもある【『やりたい人』が『やりたい事』を実行していく方が成功する確率は上がる】という考えに繋がるものがあると思っていて。
器用さや経験ももちろん大切ですが、何かを行う時にはその根底に好きだという気持ちと情熱があった方が上手くいくと僕自身も思っているんです。
それに、この場所は実は別の機会でも利用させてもらっていて。
リペアにはキャンプ形式での泊まりの新人研修があるんですが、その場所もこの富士見高原リゾートで行っているんですよ」

「『THE CAMP BOOK』がほかの音楽イベントと違う点は、何よりも家族に向けた音楽イベントだという点です。
出演していただいているアーティストは決して子供向きじゃないんですが(笑)、アクティビティ(トランポリンやボルダリングなどの体験型のものが数多くある)は無料で楽しんでもらえるようにしていたり、子供が安心して過ごせる空間で、大人達は自分達の好きなアーティストを何組も同じ空間で楽しむことができるよう、少し特別だけど家族との時間も大切にできる場所を目指しているんです」

さらには、子供のために炎天下での開催にならないように真夏から少し時期をズラし、また2日間の食事の間に飽きないように飲食店のメニューはカブらないように配慮しているという工夫もあるのだとか。

2年ぶりの開催にかけた想い

「敷地内の入り口から徒歩2分の場所に温泉があって、1日中遊んで疲れても、そこでその日の疲れを癒すことができるという、この場所で2日間の全てが満足できるような動線ができているのもオススメポイントです。
小さな子供を連れて歩き回るのは大変だと、僕自身の子育ての経験からも常々思っていたもので……。
イベントではこういうちょっとした過ごしやすさを大切にしていきたいと思っています」

そう目を輝かせてイベントのことを話す樋口さんに、満を持して、今年2年ぶりに開催できた『THE CAMP BOOK』について伺うとこんな答えが。

「実はお客さんが本当に来てくれるか不安で不安で……。
当日のゲート前の車の行列を見た時、感極まって言葉が出てきませんでしたね。
僕は1週間前くらいから天気予報も怖くて見られなくなっちゃうくらいなんですよ(笑)」

無事に終わった時に『難しかっただろうに、今年開催してくれて本当にありがとう』という声が多数届いたという。
徐々に日常を取り戻していくような手探りの日々の中で、お客さんにとってもやはり今年の『THE CAMP BOOK』は特別だったようだ。

子供たちの笑顔のために

「当日は、自分たちで作り上げたもので遊ぶ子供たちの姿を見るだけで泣けてきます。
アーティストやお客さんが笑顔でいることも、今までのことを踏まえると当たり前のことじゃないというか……、この瞬間に立ち会えて本当に幸せだと実感するんです」

そんな樋口さんの今後の展望を伺うと。

「当日までの準備はもちろん大変なことも多いし、楽しいことばかりじゃないんですが、こうして人と人とが集まって交流できる場としての音楽イベントを続けていきたいという思いが、お休みの期間を経て強く思うようになりました。
そして毎年良いイベントを続けていって、今親に連れて来られている子供が大きくなった時に、自分たちで好きなアーティストを目当てにまたこの『THE CAMP BOOK』の地に戻ってこられたらいいですね。
そしてこの富士見町といえば『THE CAMP BOOK』だよね、と地元の方にもそうじゃない方にも認識してもらえるように、今後も最高のイベントを作り上げていきたいです」

樋口 大貴さん -HIGUCHI DAIKI-

高校卒業後、総合商社や運送会社を経て2011年9月に有限会社リペアサービスへ入社。
鶴見店に営業として配属された後、店長として吉祥寺店の新規出店を手掛ける。
その後、エリア統括マネージャー業に従事しながら、プライベートではフェスやキャンプに数多く足を運んでいたことから、2016年5月に新規のイベント事業部を立ち上げる。
2017年6月に野外フェス「THE CAMP BOOK」を初開催。
オーガナイザーとしてイベントのトータルプロデュースを担当。

<会社>
【norosi stand】
イベントの企画・プロデュースから制作・運営・施工・建築部門まで行う。
2017年に『THE CAMP BOOK』開催。
イベント事業部から名称を『norosi stand』に変更後は、2020年8月、10月、12月とコロナ禍に対応する組数限定キャンプインイベント『CAMPus』(キャンパス)を開催。
現在も、イベントの企画・制作などに加え社内アウトドア研修などを手掛けるなど幅広く活動を行っている。

HP:https://the-camp-book.com
Instagram:https://www.instagram.com/thecampbookfes/

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