怖い上司になっていた、かつての自分
田尻さん自身は、分からないことや知らないことがあると、動画サイトや本などから答えを探していくことが「当たり前」だという認識でいた。
さらには、自分自身でも業務を抱えながら、新人の教育のために業務を中断することや、思うように仕事が進まない現実にイライラすることもあり、それが表に出てしまっていたのだと自戒の念を込めて話してくれた。
「自分が店長になったばかりの頃も、まだ入社半年しか経っておらず、当たり前ですが知らないことの方が多かったんです。
でも知らないことは職人さんにどんどん質問をしにいったり、自分で本を読んで調べたり。
未経験の業種で仕事をするんだからそんな苦労や努力は『当たり前でしょ』という認識でいたんです。
飛び込み営業も自分で散々やってきて、その苦労や精神的なダメージは十分に分かっていました。」
しかし「分かっていた」からこそ「自分もできたのだから、他の人もできるだろう」という間違った考えがあったのだという。
「その結果、毎年新人として入社してきた新卒の子や中途採用の人は、仕事が続かずに辞めていきました。
退職理由を人事経由で聞いたときに、飛び込み営業の辛さに加えて自分への質問のしにくさや、相談のしにくさなどが挙げられていたと聞きました。
それで自分自身の態度を大きく変えていく必要がある、と痛感したんです。」
変えるのはシステムと自分自身
自身の店長としての立ち振る舞いを徐々に改善しつつ、田尻さんは離職に繋がるもう1つの課題である飛び込み営業のシステムに焦点を当てた。
数が勝負の飛び込み営業に比べ、正確なデータを調べ、テレアポをしてから訪問をする方が格段に効率の良いことが判明。
今までスタンダードだった飛び込み営業を廃止し、2019年8月に立川店店長の座から退き、新たな事業部を設立した。それがインサイドセールス事業部だ。
「現在では、業務委託の契約で15名のテレアポ部隊がいます。
コロナ禍をきっかけに全員が自宅で作業ができるようにしました。
専用システムにログインすれば、自宅から仕事ができる。
管理している自分も現在はフルリモートワークです。
現在は下の子供が生まれたばかりなので、通勤時間が無いということがとてもありがたいですね。
奥さんも、以前より積極的に育児に参加する自分を褒めてくれていますし、何より子供と一緒にいられる時間が増えたことでより一層仕事をがんばりたい、という気持ちが生まれました。」
連鎖して明るく変わっていく現場
さらに田尻さんは手探りで始めたインサイドセールス事業だが、現場で働く営業さんたちが抱えている課題やストレスが軽くなっているのを感じるという。
そして問題となっていた離職率も、以前の飛び込み営業をしていた頃とは比べものにならないほど安定してきたそうだ。
「今後の課題は、どうすればもっと現場の負担を軽くできるか、テレアポ部隊の成約率の向上、会社としての売り上げをさらに上げていくには、などなど……、数えればキリがないほどあると思うんです。
でも、自分にも他のメンバーにも色々なアイディアがあるし、それを応援してくれる雰囲気がこの会社にはあるんです。
自分が無謀にも入社半年で店長を任せてもらえたことや、新しい事業部の立ち上げなど、声を出せば応えてくれるということが分かっているので、これからもどんどん新しいことを考え、実現させていきたいです。」