始まりの、あの日と同じように
リペアに合流する以前の伊藤さんは、RooTreeの取締役として日々の業務をこなしていた。
しかし、伊藤さん曰く「責任のある立場になって、売り上げのことしか見えておらず、周りに目を向けることや人を大事にすることなどを忘れてしまっていたんだと思います」と。
その結果、人がどんどん離れていき、現場で肝心の作業をする人間がほとんど居なくなってしまい、RooTreeは解散。
その後、グループ会社「リペア」へ異動。リペアの執行役員も兼任したため。
「自分が任されていた組織が結果的に失敗で終わった時には、正直退職することを考えていました。
その時は一生懸命やっていたつもりでしたし、これ以上のことは自分にはできないと思っていたんです。
失敗したのはすべて自分のせいだと思っていましたし。後藤社長へのその気持ちを正直に話しました。」
しかし後藤社長が出した結論は違った。
伊藤さんにはどうしても自分の元に残ってほしいという気持ちは変わらないどころか、すべてを1人で背負い込もうとする伊藤さんの実直さや責任感を改めて高く評価することになった。
自分を変えることで、周りを変える。
「以前の失敗の原因を自分の中でよく考えてみて、当時の自分が疎かにしていたことを1つ1つ大切にしていこうと思ったんです。
例えば、人と話す時の声のトーンを明るくすることや、相手側に不備があったとしても、まずは自分から『ごめんなさい』と謝ってから会話をスタートさせることなど。
過去の失敗からは、どこをどう変えれば良かったかを学ぶことができるものだと気づいたんです。
ただがむしゃらに突っ走るだけではなくて、色々な方向に前を向けて学び続けることが大事だと気づかせてくれたというか。
周りが変わらないことを嘆くのではなくて、まずは自分が変わっていくことが大事。
そうすることで環境が変わっていくこともあるって気づきました。」
失敗の中には、次の成功につながるヒントがたくさん隠されている。
何か違和感を感じたら、細かく分析して、まずは自分から変わっていくことを選択する。
伊藤さんは身をもってそれを学んだ。
肩書きではなく、何をしたかで自分の価値は決まる。
「今はリペアの執行役員という肩書きがついていますが、RooTreeに取締役としていた頃より役職を下げてもらっています。
それの方が自由に動けるし、周りに目を向けられるようになって良かったと思っているんです。
普通の会社なら役職が下がるというのも自分から言い出すことじゃないし、むしろ『良くないこと』とされがちですが、自分はそんな風には捉えていなくて、もちろん後藤社長もそんな風に捉えていないと思います。
役職に縛られてしまって、思うように自分の力を出せないなら、そんな『肩書き』はいらないんじゃないかと思うんです。
またリペアとRooTreeはグループ会社でしたが、少なからずの壁は感じていました。
リペアに移ってからは壁を感じず、同じ会社だからと色々と目を向けれるようになってきました。
会社・自分が成長するために泥臭く前進するのに、肩書があろうが無かろうが、自分がやることは変わらないと思います。」
リペアという会社の自由さや風通しの良さを代弁、またはすべてを体現しているかのような伊藤さんという存在。その目は、次はどんなことを見据えているのだろうか。
「リペアはまだ若い会社で、色々な可能性を秘めていると思います。
自分のように長くこの組織にいる人間や、新しい風を吹かせてくれる若手、そのどちらにも居場所があって、これからもどんどん新しいことにチャレンジすることを楽しんでいきたいです。
それが、カタチとなって、誰かに喜んでいただく。それがまさに『ひつようとされる人づくり』。
それを今後もみんなで続けていきたらいいですね」