老舗の伝統を受け継ぐ匠たちとのコラボで生まれた、新しい可能性
大きな扉を開いて案内された場所は、ソファや棚、カウンターキッチンといったシーケンスのサンプル家具で彩られた「シーケンスからの提案」の空間だった。
扉を空けてすぐ横に2階に通じる階段があるが、それはグレーのモルタル仕様でパズルのように規則的な螺旋の途中が表現されているかのよう。
無機質な見た目でありながらも、どこか自然のもののように優しくて懐かしい表情をしている。
まずはオーダーメイド家具を自社で作ろうと思ったキッカケから。
「自社であるリペアの案件の中で個人宅のリフォームをした時、『せっかくお客様が理想とする空間を作ったのに、そこに既成品の家具を入れなくても良いのでは?』と思ったことが最初のきっかけです。
家自体はお客様の理想や好みを詰め込んで満足のいくものになっているのに、その中にその方の個性や好きなものが完全に反映されていない既製品の家具を置いてしまうのは、少し勿体ない気がすると。」
そんな折、古くから木工加工による製品作りで高い信頼と実績を持つ新潟県新潟市にある「ダイシン工芸株式会社」とM&Aによって業務提携を実現し、パートナーシップを結ぶこととなった。
ダイシン工芸は1981年に建具を専門的に扱う会社として母体となる会社が設立され、以来40年以上に渡って、建具の他に家具をはじめとする木工製品全般の制作を行っており、リペアから見てまさに理想の提携相手だった。
ダイシン工芸としても、これまでのノウハウを活かし、新しいチャレンジを続けるリペアの傘下に置かれたことで、伝統を軸に、新しいモノ作りを展開していくチャンスが得られるようになったのだという。
「オーダーメイド家具というと、少し敷居が高いような印象を持たれることが多いと思います。
僕たちは、普段テレビやメディアで量販店の商品価格の情報をたくさん持っていて、それと比べるとどうしても高額と思われて躊躇されるなど。
そもそもオーダーメイド家具なんて未知の世界。と感じているお客様も多くいらっしゃることも理解しています」
しかし、そんな心配を取り除けるのがリフォーム会社である持つリペアの強みである。
リペアから生まれた家具ブランドということで、リフォームを依頼された方の好きなテイストや、理想の家のイメージを既に共有しているところからスタートしている為、相談もしやすい。
オーダーのやり方や見積もりなど、窓口は1本化していて、そのすべての管理をリペアの担当社員が行う。
そして、お客さんの希望と家の条件、テイストなどが反映された状態の家具が生まれる、という仕組み。
お客さんと職人との間に様々な会社や人を挟むことで生まれる誤解や認識の違いも最小限に抑えられることも大きなメリットの1つ。
世界中で変わりはじめている、家が持つ本当の意味
「コロナ禍という今の状況で、自宅が本来持っている価値が以前とは大きく変わってきているといえます。
自粛生活やリモートワークが習慣化され、生活の場所だけでなく、趣味を充実させる場所として、あるいは仕事をする場所として、自宅のあり方の意味が変化してきているように感じています。
そこで、より良い時間の過ごし方、日々の生活の質をあげる為に住宅を新しくしたい、今までの空間をもっと快適になるようリフォームしたいという需要が増えてきています。
長く時間を過ごす場所だからこそ、よりこだわりを持ちたいという声が多くなってきて、土地だけでなく家そのものを『財産』として考える気持ちが皆さんの中に強く根付いてきたように思います」
長い時間を過ごすことになる中で、1つでも「理想のもの」が家にあると、それだけで家族の満足度が格段に上がるもの、と渡會さんは続けた。
万人共通の価値ではない、自分だけの宝物を探して
「家具というのは、言わば『息の長い趣味』なんです。
例えば1つの家族があって、奥様や旦那様、お子さんなどが一緒になりアイディアを出し合い、その家族にとっての理想的な家具がこの世の中に誕生します。
その方々の生活スタイルや、趣味や、今後の未来に繋がるような。
そういう物が1つ家の中にあると、それはもう家族にとっての財産になるんです。
いわゆる不動産のような誰が見ても価値のあるものと、家族にしか分からない価値のあるもの、その2つの上に思い出が重なり合っていくと、それはもう…、財産以上に『特別な価値』があるものだと僕は思うんです。」
>>後編へ続く